S45改正三本柱について書けるだけ書く

昭和45年当時において、特許出願の件数が増大しており、全出願を審査することとしていた制度の下では審査の遅延が生じていた。このような遅延によって、特許掲載公報が出願後長期間発行されないことにより、第三者の重複した技術の開発を避けることができず、特許法の趣旨を損ないかねない状況であった。また、審査の長短によって特許掲載公報の発行されるタイミングは異なるため、出願人のウォッチングの負担の増大を招いていた。そこで、出願審査請求制度を設け、請求のあったもののみを審査するというやり方をとることで、出願人が保護価値が少ないと考える特許出願については審査を行わないこととした。
しかし、出願審査請求を行える期間として一定の考慮する期間を定めなければ出願人にとって酷である。そこで、出願審査請求を行える時期として、7年の期間を設けた。
出願審査請求制度により、審査を行う件数が減少し、特許庁の負担を縮小することが可能となる。また、出願日から7年を経過したのちに出願人等が審査請求を行わなければ、出願取下が擬制されるため、公衆のウォッチングにおいて、一定の予測可能性が確保される。しかしながら、出願審査請求を行える期間及び出願審査請求後に審査が行われ、査定又は審決が確定するまでの期間に発明の内容が公開されなければ、結局上記の第三者による技術の重複開発を避けえない。そのため、出願公開制度を設け、出願日から一定の期間を経過した出願については出願公開を行い、公衆が文献としての利用を行えるよう図った。
また、出願から査定又は審決までの期間、出願の先願の地位が確定しないままであり、後願の審査を行うために先願の査定又は審決を待たなければならないとするならば、制度が目的とする審査の迅速化は不十分なものとなる。そこで、請求の範囲を補正できる範囲の最大限である、出願の願書に最初に添付した明細書、請求の範囲、図面に記載された範囲に、拡大された先願の地位を与えた。これにより、先願の査定又は審決を待たずとも、後願を処理できることとなり、審査の迅速化がより望ましく達成される。また、出願に拡大された先願の地位を与えることで、次のような問題も解消できる。すなわち、旧制度では後願を排除するために、明細書等に記載された範囲の全部を余すことなく請求の範囲に記載して、防衛出願を多数出願するといった方策は必要な場合があったが、拡大先願制度によりこのような出願は不要となった。これにより審査の迅速化にさらに資するとともに、出願人の負担縮小にもつながる。
このように、昭和45年改正で設けられた3つの制度によって、審査の迅速化が達成されるとともに、特許庁及び出願人の双方の負担が縮小された。