職務発明の外国特許出願に係る対価請求権の扱い

外国特許出願に係る対価請求権を観念した場合、適用される法律は、法の適用に関する通則法7条に基づき第1次的に当事者の意思により決定される。当事者間に日本法を準拠法とする黙示の合意がある場合には、対価請求権の準拠法は日本法となる。しかし、特許法35条3項および4項はわが国の特許に係る特許を受ける権利から発生する対価請求権についての定めであり、外国特許出願に係る対価請求権はこれとは異なる客体であるから、特許法35条が直接に適用されることはない。
しかし、諸外国においても使用者等と従業者等の関係は変わることがなく、従業者等を保護する必要があると考えられる。また、外国特許出願に係る対価請求権も、わが国の特許出願に係る対価請求権も、基礎となる事実を同一とするものであるから、当事者の通常の意思としては、これらを一元的に処理しようと考えるのが普通であろう。したがって、外国出願に係る対価請求権にも、特許法35条3項及び4項の趣旨を及ぼすのが妥当であり、これらが類推適用されると解される。
なお、本論の根拠となる、使用者等と従業者等の関係が、外国においてわが国と同質なものであるとの命題は、国によっては必ずしも成立しない場合がある。したがって、上述の解釈をあらゆる国への外国特許出願について一般に適用すべきかは議論の余地があり、具体的事情を判断した上で法理論構成を行うべきである。