特44条2項で、出願日の遡及の例外として但書に挙げられているのは、
29条の2、30条4項、41条4項、43条1項であるが、
後ろの3つは証明書類提出についての規定であり、これは
擬制がはたらいて分割出願と同時に提出されたとみなされることに
なっている(44条4項)。
29条の2についてなぜ遡及効がないかと言えば、

これを分割による新たな特許出願についてみると、新たな出願にかかる発明は、もとの特許出願の当初の明細書に記載されているものでなければならないが、その発明を説明するために新しい技術的事項がその明細書の詳細な説明の項とか図面に入ってくることがあり、その場合にはそれが入ったものが分割出願についての出願当初の明細書及び図面となる(2項本文)。分割による新たな特許出願はもとの特許出願まで出願日が遡るので、何らの手当をしない場合には、29条の2の規定の関係では、実際には分割時にはじめて明細書に記載された発明までが、元の出願日までさかのぼって後願を拒絶できるという不合理な結果を生ずる。

青本

ここで、分割出願は新規事項を追加したものであってはならないとする
分割の客体的要件(明確にそう書いてあるわけではないが44条1項柱書から
そう読むっぽい。)があって、新規事項の追加はできないのだから
このような規定は不要ではないか?とも考えられるが、
新規事項を追加したものでないかどうかは分割出願の実体審査がなされ、
拒絶査定または拒絶審決が確定するまでは判定されないのであるから、
引用文のとおり手当をすることがない場合は他の出願について当該分割出願を
29条の2の引例としてしまう虞がある。よって、このような規定が設けられた。