「産業」の解釈についての特許庁の運用と裁判例

特許法第29条
 産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。


 「産業」には、古典的には医療業が含まれていないと考えられていた。
 現在の実務においては医療機器、医薬品が特許の対象となることは周知のとおりだが、人間を手術、治療または診断する方法は特許を与えられないとする運用がとられている。
 両者になぜ違いが出るかというと、医療機器等の物については生産者が販売した時点で権利消尽するので、医師の行為が侵害を構成する可能性が低いが、単純方法の発明については消尽論が当てはまらないので、医師の治療行為が侵害を構成する可能性が高く、人道的な観点から問題があるためであるとする説がある。
 平成14年4月11日東京高裁判決は、産業上利用可能性の有無の判断を物と単純方法で異ならしめることは合理性を欠くとしたものの、治療行為の特許については医師が侵害を構成する可能性があり、特許法69条3項のような行使の制限規定(薬剤師が調剤する行為には特許権が及ばない。)がない以上、上記運用は妥当とした。
 中山説は、医療業が「産業」に含まれないとして特許を拒絶するのではなく、特許は成立するとしたうえで、行使に制限を加える「川下規制」を支持している(米国ではそのような制度になっておりこれを評価している。)。
 69条に新たに行使制限規定を置くなど、明文規定に則った運用が待たれる。
 今回の改正では議論されなかったのかな?


あ〜中山先生の本買っちゃおうかな〜
知財管理技能士のイベントで中山先生の講演あったやつ行っとけばよかったなぁ〜(ミーハー)